口腔内細菌とは?細菌の種類や予防法について解説します

この記事の監修者

中島 美砂子

中島 美砂子/歯科医師・研究者(歯学博士)

医療法人健康みらい RD歯科クリニック理事長。九州大学大学院歯学研究科を修了後、同大学院並びに米国研究機関にて歯内治療の研究を推進。
その後、「細胞移植による歯髄再生治療」の臨床研究を行い、実用化。

代表著書
・Nakashima M, et al.: Pulp regeneration by transplantation of dental pulp stem cells in pulpitis: A pilot clinical study.Stem Cell Res Therapy 2017.世界初の歯髄再生治療の臨床研究

・中島美砂子、庵原耕一郎:―患者まで届いている再生医療―「歯髄・象牙質再生治療の現状」 日本再生医療学会雑誌 2019. 

日々のケアを怠り、口腔内細菌を放置すると、口内疾患だけでなく全身の疾患にまで発展するおそれがあります。
本記事では、口腔内細菌によって起こりうる病気や予防法について解説します。

正しいケアで健康的な口内環境を維持し、病気予防に努めましょう。

 

口腔内細菌とは?

口腔内細菌とは、ミュータンス菌などの口内に存在する細菌の総称です。

人間の口内には、300〜700種類の細菌が生息しているといわれています。実は、母親のお腹にいる胎児は無菌状態であり、口内に細菌は存在しません。
しかし、生まれてから母親などの家族から細菌が移り、3歳頃までに口内の細菌バランスが決まるとされています。

口腔内細菌は、唾液の洗浄・抗菌作用と、日々の歯磨きによって繁殖が抑えられています。

しかし、病気や加齢などが原因で免疫力が低下したり、口腔内の清掃が十分でなかったりすると、繁殖してさまざまな病気のリスクにつながります。

北海道大学大学院歯学研究院によると、「Streptococcus mutans(ミュータンス菌)は、血管の炎症を介して、がん転移を促進する。したがって、良好な口腔状態を維持し、口腔細菌の血中への侵入を防ぐことが転移予防のために大切」とされています。

 

引用:日本歯科新聞「ミュータンス菌が、がんの転移を促進/血管炎症を介して影響」

 

口腔内細菌の種類

主な口腔内細菌の種類は以下の6つです。

 

  • ミュータンス菌
  • ラクトバチルス菌
  • ソブリヌス菌
  • ポルフィロモナス・ジンジバリス菌
  • トレポネーマ・デンティコラ菌
  • タネレラ・フォーサイシア菌

それぞれの特徴を解説します。

ミュータンス菌

多くの場合、虫歯菌はミュータンス菌を指すケースが多いです。
もともと口内に存在する菌ではなく、ミュータンス菌に感染した人が使った食器や箸、スプーンなどを使ったりすると感染するといわれています。

糖質(主に砂糖)を原料に不溶性グルカンという粘着性物質を作り、歯の表面に付着する性質があります。砂糖のない環境では、歯の表面へ付着する力は低く、他の菌とかたまりになることもできません。

 

ラクトバチルス菌

ミュータンス菌と同様に、虫歯の原因となる強い酸を作り出し、虫歯を進行させます。

表面がツルツルした歯には付着しにくいですが、他の菌が作り出した不溶性グルカン表面に付着し、虫歯の進行とともに増えると言われています。

 

ソブリヌス菌

近年発見された虫歯菌の一つであり、酸素や糖がない環境下でも、虫歯の原因となる酸を作り出す菌です。

ミュータンス菌以上に、歯に付着するための不溶性グルカンを形成する性質があります。
ミュータンス菌だけを保持しているよりもソブリヌス菌も保持している人のほうが虫歯になりやすいといわれています。

 

ポルフィロモナス・ジンジバリス菌

最も歯周病に関わりのある細菌であり、歯周病独特の悪臭の元となる内毒素を出します。
歯茎の周りの組織に強力に線毛で付着し、血液をエネルギー源に歯周ポケットを深くし、蛋白分解酵素により骨を溶かして歯をぐらつかせます。根尖性歯周炎の悪化にも関与しています。

日本人の65%以上が感染していると言われており、口内の他に、気道・結腸・上部消化管にも生息しています。

 

トレポネーマ・デンティコラ菌

免疫抑制作用に関係しているとされ、重度歯周炎の方で検出頻度が高いとされています。血液をエネルギー源にしている細菌であり、根尖性歯周炎の悪化にも関与しています。

運動能力が高く、血管内にも入り込んで増殖することができ、心臓冠状動脈疾患部や動脈瘤から検出されることもあります。

 

タネレラ・フォーサイシア菌

歯周病の原因となるジンジバリス菌やディンティコラ菌とともに、歯周病や根尖性歯周炎を悪化させるおそれがあるとされています。内毒素を持ち蛋白分解酵素も作ります。

 

口腔内細菌によって起こる病気

口腔内細菌が繁殖すると、主に以下の病気を引き起こすおそれがあります。

 

  • 虫歯
  • 歯周病
  • 根尖性歯周炎
  • 感染性心内膜症
  • カンジダ症
  • 誤嚥性肺炎

それぞれについて、詳しく解説します。

 

虫歯

虫歯は、口腔内細菌が食べかすを栄養とし、酸を作り出すことで歯が溶ける状態を指します。

虫歯の原因となる代表的な菌は、ミュータンス菌やラクトバチルス菌、ソブリヌス菌が挙げられます。
ミュータンス菌やソブリヌス菌が自身で作り出した不溶性グルカンにより歯の表面に付着すると、さらに、多くの細菌がグルカンにくっついてプラーク(歯垢)になります。その棲み家の中で虫歯菌は砂糖を分解して「酸」を作り出すことにより歯の表面を溶かし、虫歯となります。

 

歯周病

歯周病は、口腔内細菌が歯と歯茎の境目から入り込み、歯を支える組織や骨に炎症が起きている状態です。
血や膿が出たり、骨が溶けてきて歯がぐらつき、重症化すると歯が抜け落ちたりします。

歯周病の原因となる代表的な菌は、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌やトレポネーマ・デンティコラ菌、タネレラ・フォーサイシア菌があげられます。

 

根尖性歯周炎(感染根管)

根尖性歯周炎は、口腔内細菌が神経(歯髄)を除去した後の根の穴に入りこんで増え、さらに細菌や細菌の作り出す毒素が根の下の組織や骨まで侵入して、膿がたまり、骨が溶けている状態です。
歯根部の歯茎が腫れ、咬むと痛くなったりします。重症化すると歯茎に穴が開いて膿が出て、穴がふさがると腫れてひどい痛みを感じ、その状態が繰り返し生じることがあります。

根尖性歯周炎の原因となる菌は、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌、トレポネーマ・デンティコラ菌、タネレラ・フォーサイシア菌等です。

 

感染性心内膜症

感染性心内膜症は、心臓の壁に細菌がついて感染を起こし、心不全などの症状を引き起こす病気です。

たとえば、抜歯をした後の傷から口腔内細菌が侵入するなどの原因で発症するおそれがあります。

 

カンジダ症

カンジダ症は、口内のカビ菌が増殖し、味覚障害や舌、口の中の粘膜の痛み、違和感などの症状が現れる病気です。

体の免疫力が低下すると、感染しやすくなるとされています。

 

誤嚥性肺炎

誤嚥性肺炎は、口腔内細菌が誤って気管から肺に入り、炎症が広がった際に肺炎を引き起こす病気です。

飲み込む力や咳をする力が衰えている方が感染しやすいとされています。

 

口腔内細菌の感染を予防する方法


口腔内細菌の感染を予防するには、主に以下の3つの方法が有効とされています。

 

  • 丁寧に歯磨きをする
  • 口内を乾燥させない
  • 定期的にクリーニングする

日々の体調管理は勿論のこと、適切なタイミングで丁寧に歯磨きを行い、口内を乾燥させないことが大切です。
また、口腔内細菌の繁殖の原因となる歯石を、定期的に除去することが重要になります。

 

丁寧に歯磨きする

口腔内細菌の感染を予防する方法として最も重要なのが、丁寧な歯磨きです。
特に汚れが残りやすい歯の噛み合わせの面と歯と歯茎の境目には、歯ブラシをしっかり当てて磨きましょう。歯と歯の間は歯間ブラシやデンタルフロスも加えて清掃することがおすすめです。

また、歯磨きのタイミングは就寝前と朝食前、食後が効果的です。
就寝中は唾液量が低下するため、自浄作用が薄れてしまい、口内細菌が増殖します。よって、就寝前は特に入念に歯磨きをしましょう。
また、起床後に歯磨きやうがいをしないまま朝食を食べると、口腔内細菌が胃腸に入り込む可能性が高まります。

食後の歯磨きも重要です。食後すぐに歯を磨くことにより、歯の表面や歯周ポケット内の細菌増殖・プラーク形成、これに伴う虫歯や歯周病を防ぐことができます。また食後、酸性に傾いた口の中を歯磨きによって中性に戻すことも、虫歯抑制に効果的です。ただし、かんきつ類や炭酸飲料など酸性の飲食物を摂取したときには、食べ物に含まれる酸によって歯の表面のエナメル質が一時的にやわらかくなるため、歯磨きによりエナメル質を傷つけてしまう可能性があります。その場合は、まずうがいをして口の中を中性にし、30分から1時間ぐらいたってから歯磨きをするのが良いといわれています。

口腔内細菌の感染を防ぐためにも、適切なタイミングで正しく歯磨きを行うことが大切です。

 

【関連記事】
歯石と歯垢(プラーク)の違いとは?付着の原因や落とし方を解説

 

口内を乾燥させない

口内が乾燥すると、口腔内細菌やウイルスが繁殖しやすくなります。

乾燥を防ぐためには、唾液を出すことが大切です。
リラックスして副交感神経を優位にしたり、食事する際によく噛んだりすると唾液が出やすくなります。

また、口呼吸しないよう常に鼻呼吸を心がけることも重要です。

 

定期的にクリーニングする

プラークは長期間除去されないままになると石灰化して歯石がたまってきます。歯石は歯磨きだけでは除去が難しくなるため、口腔内細菌がより繁殖する原因になります。
3〜6ヶ月ごとなど定期的に歯科を受診して、歯石取りなどのクリーニングを受けるようにしましょう。

 

まとめ

口腔内細菌とは、ミュータンス菌などといった口内に存在する細菌の総称のことです。
口腔内細菌が繁殖すると、主に以下の病気を引き起こすおそれがあります。

 

  • 虫歯
  • 歯周病
  • 根尖性歯周炎
  • 感染性心内膜症
  • カンジダ症
  • 誤嚥性肺炎

口腔内細菌が繁殖すると、口内疾患だけでなく、全身にまで疾患が及ぶおそれがあるため注意が必要です。
これらのリスクを避けるためには、以下の予防策が有効です。

 

  • 丁寧に歯磨きをする
  • 口内を乾燥させない
  • 定期的にクリーニングする

日々の自己管理と歯科医院での定期的なメンテナンスで、口腔内細菌の感染を防ぎましょう。

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