歯髄再生医療の実用化はいつから始まる?治療の流れや注意事項について解説します

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田中 宏幸/歯科医師

医療法人樹翔会 名古屋RD歯科クリニック院長。歯科医師歴20年以上。
患者様一人一人に「最良のオーダーメイド治療」を提供すべく、様々なニーズや症例に合わせた自由診療システムを採用している。
所属学会
日本小児歯科学会、日本再生医療学会、日本インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、日本臨床歯科CAD/CAM学会など
メディア情報

・読売テレビ「かんさい情報ネットten.」

https://youtu.be/FYxGh2_lbls

・歯科業界のコミュニケーションマガジン「Dentalism」

https://www.satsuki-dc.com/wp-content/uploads/2021/09/45b56eaa7eb00975f093afa75bda7c3a.pdf

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歯髄再生医療の実用化はいつから始まる?治療の流れや今後の展望について解説します

歯髄再生医療の実用化はいつから始まるのかと、待ちわびている人もいるのではないでしょうか。
結論からいうと、歯髄再生医療の実用化はすでに始まっています。

 

本記事では、歯髄再生医療の実用化がどのようになされているのか、治療の流れを含めて解説します。歯髄再生医療を検討している方や、知識を深めたい方は参考にしてみてください。

歯髄再生医療とは?

歯髄再生医療とは、親知らずなどの不要になった歯から歯髄幹細胞を培養し、治療に必要な歯に移植する治療法のことです。歯髄幹細胞は歯髄という神経組織を作るもととなる細胞です。歯髄には、歯に栄養を送ったり、痛みを感知する役割があります。また、むし歯の悪化を防止する作用も期待できるのが特徴です。

 

歯髄幹細胞を移植してから、次第に歯髄が再生され、歯の感覚が戻ってくるとされています。6ヶ月〜1年程度経過すると、歯髄の周辺組織が再生されるため、仮詰めから最終補綴物に切り替えます。

 

歯髄再生医療では、虫歯治療などで失った血管や神経が再生することで、健康的な歯が取り戻せます。

 

歯髄再生医療の実用化はいつから始まる?

歯髄再生医療は2020年8月、象牙質再生医療は2023年6月から実用化されています。象牙質再生医療は、不要になった歯の歯質を基に、歯髄再生のタイミングで象牙質も再生させる技術です。象牙質は、歯髄(歯の神経)を取り巻く組織であり、役割は歯髄を守ることです。

 

歯の主成分である象牙質は歯髄とエナメル質の間に位置します。象牙質は硬組織と軟組織のハイブリッド成分で形成されており、エナメル質が外的な衝撃を受けた際に歯が割れたり、折れたりすることを防ぎます。

 

あらかじめ採取した歯髄幹細胞を培養し、不要となった歯の加工物をあわせて移植することで象牙質まで再生を促します。

 

象牙質再生医療の実用化のメリットは、以下2つです。

 

  • 歯の強度が上がる
  • むし歯で削った部分に補う人工の詰物と歯質間の隙間を埋めて歯内の感染を防止する

 

実用化された歯髄再生医療・象牙質再生医療の流れ

まずは、親知らずなどの不要になった歯を抜歯します。抜歯した歯を培養センターへ送り、歯の中から取り出した歯髄に含まれる歯髄幹細胞を培養します。また、残った歯は適切な大きさに砕き、表面処理や洗浄処理を行います。その後、砕いた歯の加工物や薬剤と一緒に歯髄幹細胞を、治療対象の歯の根管に移植します。

 

1ヶ月経過すると、歯の周辺組織にある幹細胞が歯の内部に集まり、神経や血管が伸びていきます。その後、歯髄が再生され、本来の歯の感覚が戻るでしょう。やがて象牙質も再生し、被せものが装着できるようになります。

 

歯髄再生医療が必要になるケースとは?

歯髄再生医療が必要になるケースは、虫歯菌に感染し、歯髄が死んでしまうケースです。
虫歯菌に感染するとエナメル質や象牙質が溶けていき、次第に歯髄にまで達して、痛みが生じます。重症化すると歯髄が死んでしまい、血流が途絶えてしまいます。これを歯髄壊死といい、放置すると腐敗臭が生じる場合があります。

 

また歯周病菌に感染したり、食いしばりや歯ぎしりなどで力が加わったりすることで、歯髄が死んでしまう原因になるでしょう。

 

歯髄がないとどうなる?

歯髄がないことでどのようなリスクが起こりうるでしょうか。
想定されるリスクは以下の通りです。

  • 歯の見た目が悪くなる
  • 虫歯が進行しやすくなる
  • 歯がもろくなる


歯髄がないと、日常生活に支障が生じ、健康が損なわれるおそれがあります。抜髄(神経を抜くこと)をする際は、歯医者に十分に相談した上で実施しましょう。

 

歯の見た目が悪くなる

歯髄がなくなると歯に栄養が行き渡らなくなるため、灰色や茶色に変化して歯の見た目が悪くなるおそれがあります。特に営業職や接客業をしている方は影響が出るかもしれません。

 

虫歯や感染根管が進行しやすくなる

歯髄がない状態では、痛みを感じなくなります。そのため、虫歯が進行した際に生じる痛みを感じず、気づかないうちに重症化するおそれがあるでしょう。また、歯髄がない歯は細菌に対する抵抗力がないため、細菌に対する抵抗力が弱まり、細菌により根尖病巣や根尖性歯周炎が進行しやすくなります。そのため、神経がない状態で生活する場合は、定期的に歯のメンテナンスを受ける必要があります。

 

歯がもろくなる

栄養が行き渡らなくなった歯は、もろくなり、割れるリスクが高まります。最悪の場合、食事中に硬い食べ物を噛むタイミングで歯が割れることもあるでしょう。結果として、歯の寿命が短くなるため、定期的に歯医者で歯をチェックしてもらう必要があります。

 

歯髄再生医療の注意点

歯髄再生医療を行う上では、把握しておかなければならない注意点があります。
主な注意点は以下の通りです。

  • 細胞移植後の経過観察が必要
  • 歯髄再生医療が実施できる歯科医院が限定されている

細胞移植後の経過観察が必要

歯髄再生医療では、歯髄を移植してからすぐに歯髄が再生されるわけではありません。移植後、組織や神経が再生するまで6ヶ月〜1年程度の時間を要し、病院での経過観察を必要とします。移植後すぐに治療効果が得られるわけではないため、あらかじめ把握しておきましょう。

 

歯髄再生医療が実施できる歯科医院が限定されている

歯髄再生医療は、全ての歯科医院で受けられるわけではありません。再生治療は特定認定再生医療等委員会と呼ばれる機関での審査を通過し、厚生労働省(地方厚生局)で提供計画を受理された歯科医院に限定されます。以下リンクをご覧ください。https://pulp1.drma.or.jp/#tour。

 

歯髄再生医療のための歯髄幹細胞バンクとは?

歯髄幹細胞バンクとは、歯髄再生医療のために必要な歯髄幹細胞を保管できるサービスのことです。アエラスバイオ株式会社の「アエラスバイオ歯髄幹細胞バンク」では、生え変わり時期の乳歯や親知らず、歯列矯正によって抜歯が予定されている歯などを保管できます。

 

年齢制限はなく、入院などの特別な手続きは必要がありません。契約手続きを行えば、歯科医院で抜歯後、歯医者から培養センターへ歯が送られる仕組みになります。

 

培養センターに送られた歯は、その中にある歯髄幹細胞を採取、培養の後、液体窒素により凍結保管を行います。そして将来的に必要になったタイミングで歯髄幹細胞を取り出し、再生医療に用いることが可能です。アエラスバイオ歯髄幹細胞バンクは、将来的に歯髄再生医療が必要になったときに保険として活用できるサービスと言えるでしょう。

 

まとめ

歯髄再生医療とは、親知らずなどの不要になった歯から歯髄幹細胞を培養し、治療が必要な歯に移植する治療法のことです。歯髄再生医療は、2020年8月から実用化されています。
抜歯した歯から歯髄幹細胞を採取・培養し、抜歯した歯の加工物をあわせて移植することで象牙質まで再生させます。

 

歯髄は、健康的な歯を維持する上で必要不可欠の組織です。
歯髄がないと、以下のリスクが生じるおそれがあります。

 

  • 歯の見た目が悪くなる
  • 虫歯が進行しやすくなる
  • 歯がもろくなる

上記のリスクを防止するためにも、歯髄は必要です。
現在、歯髄再生医療のために必要な歯髄幹細胞を保管できる歯髄再生バンクと呼ばれるサービスが展開されています。これは、将来的に歯髄再生医療が必要になったときに保険として活用できるサービスです。

 

実用化された歯髄再生医療を受けることで、歯髄がない方であっても、健康的な歯が取り戻せるおそれがあります。抜髄をしてお困りの方は、健康的な歯を取り戻すためにも、歯髄再生医療を活用することをおすすめします。

 

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