う蝕とは?原因や治療法を解説します

この記事の監修者

アバター画像

土黒 さくら/歯科医師

医療法人社団桜麗会 赤坂さくら歯科クリニック院長。港区赤坂に自由診療専門クリニックを構え、高品質な治療を提案。患者様のお口の「健康と美の維持」を追求し、長期的な安定を目指す。SNSを通した積極的な情報発信活動も行う。
所属学会
日本歯周病学会、日本口腔インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、インビザライン認定ドクター
メディア情報

・Youtubeチャンネル「歯医者のさくら先生 」

https://www.youtube.com/channel/UCC-OnxzXR9XxTOI_9x8aC0w?app=desktop

・インビザラインキレイラインcollege

https://invisa-kirei-line.com/

HPリンク

港区赤坂の歯科歯医者 | 赤坂さくら歯科クリニック

う蝕とは、歯が細菌によって発生した酸によって溶けた状態のことです。
細菌によって、歯の一番外側にあるエナメル質が徐々に溶かされ、歯の内部へ進行していくことで引き起こされます。

本記事では、う蝕の原因や治療法、予防法などについて解説します。

 

う蝕とは?

う蝕とは、エナメル質と象牙質が溶けた状態を指します。
原因は、虫歯菌が作り出す酸です。虫歯菌が糖分を餌にして酸を出すことで、う蝕が発生します。

初期は痛みなどが無い場合もありますが、症状が進行すると、激しい痛みを伴うおそれがあります。

う蝕は、症状が進行し、痛みが激しくなる前に適切な治療を行わなければなりません。
なぜなら、重症化した場合抜歯をしなければならなくなるからです。

う蝕を発生させないためには、う蝕予防を日頃から行う必要があります。

 

う蝕の主な原因とは?

う蝕の主な原因としては、以下のようなものが考えられます。

 

  • 細菌(ミュータンス菌など)
  • 食事性気質(糖質を多く含む食べ物や飲み物の頻回摂取や、間食の回数など)
  • 宿主および歯(唾液や歯並び、歯質など)

歯並びが悪かったり、唾液が出なかったりすると、口内細菌の数が増え、う蝕のリスクが高まります。また、きちんと歯を磨く習慣がない、偏食や不規則な生活リズムの人も、う蝕にかかりやすいといえるでしょう。

う蝕の発症率は、定期的に歯磨きを行う、間食時間を決める、規則正しい生活を送るようにするなどの対策で抑えることが可能です。

 

う蝕の種類

う蝕の種類は以下の3つで、種類によって原因やでき始める時期が異なります。

 

  • 平滑面う蝕
  • 小窩裂溝う蝕
  • 根面う蝕

それぞれについて詳しく解説します。

平滑面う蝕

平滑面う蝕とは、歯の表面にできるむし歯で、進行が遅く、最も予防がしやすいう蝕のことです。
細菌が出す酸によって、エナメル質のカルシウムが溶け出し、穴が生じます。

隣合う永久歯の間に平滑面う蝕ができ始めるのは、20〜30歳頃とされています。

 

小窩裂溝う蝕

小窩裂溝う蝕は、歯の咀嚼面や奥歯の頬側裂溝の歯面に生じる溝にできるう蝕のことです。

進行が早く、10代の頃から永久歯にでき始めるのが特徴です。
歯面の溝は、歯ブラシの毛先よりも狭いためケアするのが難しく、う蝕ができやすい部分です。

 

根面う蝕

根面う蝕は、歯周病や加齢などにより歯茎が下がり、歯の根の部分(根面)が露出したところにできるむし歯のことです。中年以降にできやすく、唾液不足や糖分の多い食事などが原因です。

う蝕の種類の中でも、最も予防と処置が難しいとされています。

 

う蝕の分類

う蝕は、進行具合に応じて5つの段階に分類されます。

 

初期う蝕

エナメル質のみのう蝕の状態を指します。
フッ素塗布などで進行を食い止めることができる場合があるため、歯を削る必要はありません。

 

う蝕第1度

初期う蝕が少しだけ進行した状態です。エナメル質がう蝕して歯の表面が茶褐色や白色に変化します。

痛みを感じない場合が多いため発見が難しく、放置するとう蝕が進行して象牙質まで到達します。

 

う蝕第2度

う蝕が象牙質に達した状態です。痛みを感じるようになり、歯の表面に穴があく場合があります。
穴が小さくても、内部でう蝕が進行している場合もあるため注意が必要です。

放置すると、う蝕が進行して象牙質の内部にある歯髄に到達します。

 

う蝕第3度

う蝕が歯髄に到達した状態です。う蝕の細菌が感染を起こし、激しい痛みが生じます。
細菌が感染した歯髄を除去するために、抜髄(歯髄を除去する治療)が必要です。

 

う蝕第4度

エナメル質と象牙質が溶け、歯根だけになった状態です。歯髄が死んでおり、反って痛みを感じなくなります。
歯の内部の治療で改善できない場合、抜歯が必須になるおそれがあります。

放置すると、全身の健康状態にまで影響が及ぶ場合があります。

 

う蝕の治療法とは?

う蝕の治療法は主に以下の4つです。

 

  • フッ素
  • 充填剤
  • 根管治療
  • 抜歯
  • 歯髄再生医療

う蝕の治療法は、進行状況によって異なります。歯科医師に相談し、状況に応じて正しい治療法を選択しましょう。

 

フッ素

う蝕の進行がエナメル質の表面が溶ける前の段階で止まった場合、フッ素を使用することでエナメル質の自己修復が促進できます。

具体的には、処方される高濃度のフッ素を含む歯磨き粉を使う、歯科医院でフッ素を塗布してもらうなどの方法があります。

 

充填剤

う蝕が象牙質に進行して歯に穴が開いた場合は、内部の歯質をドリルで削り、そのスペースに充填剤を詰めなければなりません。

充填剤としては、銀アマルガム合金や金、コンポットレジンやグラスアイオノマーなどが使用されます。

 

根管治療

う蝕が進行し、歯髄が損傷を受けている場合、根管治療で痛みを取り除く必要があります。

根管治療とは、歯の根管にある虫歯に感染した神経や細菌などを除去する治療方法のことで、主な手順は以下の通りです。

 

  1. 根管の状況を見て、診断を実施
  2. ラバーダム防湿(根管に細菌を侵入させない方法)をし、健全な歯をできるだけ傷つけないようながら細菌を除去
  3. 薬剤で根管を洗浄・消毒
  4. 根管に消毒薬を詰め、細菌感染を防止
  5. 殺菌ができた状態で詰めもの・被せものを装着

根管治療が適切にできれば、歯周組織が改善され、痛みの改善が期待できます。

 

抜歯

う蝕が進行し、歯根が割れている(特に歯根が垂直に割れている)場合、抜歯が必要になるケースが多いでしょう。

歯が割れている状態を放置すると、歯茎や歯槽骨(歯の根を支える骨)が炎症を起こし、痛みが強くなるおそれがあるためです。

 

歯髄再生医療

歯髄を抜いた患者さんの場合、痛みなどの症状に気づけず、う蝕が進行するおそれがあります。

そこで有用となるのが、歯髄再生医療です。
歯髄再生医療とは、親知らずなどの不要になった歯から歯髄幹細胞を培養し、治療に必要な歯に移植する治療法です。

歯髄が再生することで、歯に栄養を送り、痛みを感知する機能が備わります。このためう蝕の悪化を防止する作用も期待できます。

「歯髄幹細胞バンク」は、将来的に歯髄再生医療が必要になったときの保険として活用できるサービスです。
生え変わり時期の乳歯や親知らず、歯列矯正によって抜歯が予定されている歯など、歯髄再生医療のために必要な歯髄幹細胞を保管できます。
歯髄についてより詳しく知りたい方はこちら

 

う蝕の予防法とは?


う蝕の主な予防法は以下の通りです。

 

  • 糖分をなるべく控える
  • 口腔ケアを徹底する
  • フッ素を活用する

自宅ですぐに実践できるものから歯科医院で受けるものまでさまざまな方法があるため、自身に合ったケアでう蝕を予防しましょう。

糖分をなるべく控える

糖分をたくさん摂取すると、歯垢のミュータンス菌が酸を作り出し、う蝕の原因になります。

普段から間食などで甘いものを食べる頻度が多い方は、なるべく控えるようにしましょう。もし甘いものを食べた場合は、歯磨きを行うことで予防効果が期待できます。

 

口腔ケアを徹底する

う蝕の原因となる歯垢は、歯の表面に付着しており、うがいなどでは除去できないため歯磨きが重要です。
歯垢は、歯と歯の間や歯と歯肉の境目などに溜まりやすいため、これらの箇所に歯ブラシの毛先がつくように歯を磨きましょう。
毛先を歯面に当て、毛先が広がらない程度で小刻みに磨くと、歯垢が効率的に除去しやすくなります。

また、磨き忘れを防ぐためにも、歯を磨く順番を決めて毎回の順番通りに歯磨きをすると、磨き忘れが少なくなっておすすめです。

歯と歯の間の歯垢は、歯間ブラシやデンタルフロスを活用しましょう。
歯磨き後に使用すると、歯ブラシでは落としきれなかった歯垢を取り除くのに役立ちます。

 

フッ素を活用する

フッ素を活用することでエナメル質の酸への抵抗力を高め、う蝕ができにくくする効果が期待されます。
フッ素を使用する方法としては、主に以下3つが挙げられます。

 

  • フッ素配合の歯磨き粉を使用する
  • フッ素を歯科医院で塗ってもらう
  • フッ素洗口する

フッ素配合の歯磨き剤を使用して歯磨きすることで、再石灰化が促進され、歯質の強化が期待できるでしょう。
また、虫歯菌の働きを弱め、酸が作られるのを抑制できる効果も期待できるとも言われています。

フッ素は歯科医院で塗ってもらうこともできます。年に数回塗ってもらうだけでも一定の効果が期待でき、その他フッ素でうがいを行うフッ素洗口もおすすめです。

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科では「水道水中の天然フッ化物濃度が0・1ppm高くなるごとにう蝕治療経験を有する子供が3%少なくなる」との研究結果を発表しています。

 

引用:日本歯科新聞「水道水のフッ化物濃度によってう蝕予防効果に差/医科歯科大が解明」

 

まとめ

う蝕とは、エナメル質と象牙質が溶けた状態を指します。
う蝕の主な原因は以下の通りです。

 

  • 細菌(ミュータンス菌など)
  • 食事性気質(チョコレート、キャラメルなどの摂取や間食の回数など)
  • 宿主および歯(唾液や歯並び、歯質など)

歯並びが悪かったり、唾液が出なかったりすると口内細菌の数が増え、う蝕のリスクが高まります。
また、歯を磨く習慣がなく、偏食したり不規則な生活を送ったりしている人も、う蝕にかかりやすいといえるでしょう。

う蝕を治療するためには、主に以下5つの方法があります。

 

  • フッ素
  • 充填剤
  • 根管治療
  • 抜歯
  • 歯髄再生医療

う蝕の進行状況によって治療法は異なるため、歯科医師に相談し、状況に応じて正しい治療法を選択してください。

う蝕を放置すると重症化し、最悪の場合、抜歯をしなければならなくなります。このような事態を防ぐためにも、普段から歯磨きを徹底しておきましょう。

またデンタルフロスなどを活用して、効率的に歯垢を落とす習慣をつけておくことも大切です。糖分をなるべく控える、フッ素を使用するなどの対策で、日頃からう蝕の予防につとめましょう。

一覧に戻る

pagetop