ヘミセクションのあとの歯の寿命は?適応可能な条件や治療手順を解説します
この記事の監修者
田中 宏幸/歯科医師
医療法人樹翔会 名古屋RD歯科クリニック院長。歯科医師歴20年以上。患者様一人一人に「最良のオーダーメイド治療」を提供すべく、様々なニーズや症例に合わせた自由診療システムを採用している。
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- 日本小児歯科学会、日本再生医療学会、日本インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、日本臨床歯科CAD/CAM学会など
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ヘミセクションのあとの歯の寿命は?適応可能な条件や治療手順を解説します
「ヘミセクションしたあとの歯の寿命ってどのぐらい?」
このように疑問を持つ方がいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、ヘミセクションのあとの歯の寿命・予後について解説します。ヘミセクションのことを知らない方のために、適応可能な条件や処置の流れについても解説します。ヘミセクションの治療を検討している方や、ヘミセクションの知識を深めたい方は参考にしてみてください。
ヘミセクションとは?
ヘミセクションとは、複数の歯根(歯の根っこ)が存在する歯を、分割して残す治療法です。たとえば歯に2本の歯根が存在する歯があったとします。ヘミセクションでは、この場合、歯根を2つに分割します。その後、問題がある方の歯根だけを抜歯するのが特徴です。
ヘミセクションを行う前は、神経を取り除いておく必要があります。
神経が残っている場合は、根管治療を行わなければなりません。また神経を除去した歯でも、細菌感染のおそれがある場合は、再度根管治療する必要があります。
ヘミセクションとトライセクションの違いは?
ヘミセクションの場合は、2本ある歯根のうち、半分を切除する方法を指します。
一方で、トライセクションは、3本ある歯根のうち、1/3を切除する方法です。
上記の通り、どちらの治療法を選ぶかは、歯根の本数によって異なります。
ヘミセクションのあとの歯の寿命は?
ヘミセクションのあとの歯の寿命は、短いとされています。なぜならヘミセクションは根管治療・補綴・外科処置などが関連し、残った歯質が少なく、難しい処置だからです。ヘミセクションは、処置の特性上、定期的なメンテナンスが必要です。
特に、分割後に抜歯したあとの部位は、プラークコントロールが困難になります。
適切にコントロールができなければ、細菌感染が起こり、歯肉炎や歯根破折などの原因になります。
ヘミセクションのメリット
一方でヘミセクションのメリットは、入れ歯やインプラントを避け、ブリッジを選択できるようになる点です。また臼歯を分割せずに1本丸ごと抜歯するよりも、ブリッジが短くできたり、虫歯ではない健康な歯を削らなくて済むというメリットもあります。ブリッジ治療を検討したい方や、歯を削らない方法で治療を検討した方におすすめの治療方法です。
ヘミセクションが適応可能な条件とは?
ヘミセクションを行うためには、以下の条件に合致している必要があります。
主な条件は以下の通りです。
- 残った歯の歯根が骨でしっかり支えられている
- 歯根同士が離れている
- 歯根の股の部分が浅い位置にある
ヘミセクションは、上記の適応条件を満たさなければ処置できません。
ヘミセクションが適応可能な条件①|残った歯の歯根が骨でしっかり支えられている
骨の支えがない歯根を残した場合、噛む力によってトラブルが発生するおそれがあります。そのため、ヘミセクションを行う場合は、噛む力に耐えうる歯根が、しっかりした骨に支えられている必要があります。
ヘミセクションが適応可能な条件②|歯根同士が離れている
ヘミセクションでは、歯根を綺麗に分割しなければなりません。歯根形状は個人差がありますが、中には歯根先端同士がくっついている場合があり、施術できないおそれがあります。もし歯根同士がくっついている状態で施術を行った場合、問題がない方の歯根を傷つけてしまい、トラブルになる場合があります。
ヘミセクションが適応可能な条件③|歯根の股の部分が浅い位置にある
ヘミセクションを行う場合は、歯根の股の部分が浅い位置にあり、周囲の骨との高さが均一になっていることが望ましいです。もし歯根の股の部分が深い位置にある場合、歯茎が退縮してしまい、食べかすなどが挟まりやすくなります。
また、清掃が難しくなるため、歯周病や虫歯にかかるおそれが高まるでしょう。
もし残した歯で上記のトラブルが発生すると、周りの歯にも影響が及び、健康的な歯が維持しづらくなります。
ヘミセクション・トライセクションの処置の流れ
ヘミセクション・トライセクションを行う際の処置の流れを解説します。
治療内容や治療の流れを知りたい方は参考にしてみてください。
ヘミセクションの処置の流れ
ヘミセクションを行う際は、事前に神経を除去しなければなりません。神経を取ったあとの歯でも、細菌感染がある場合は、根管治療が必要です。
根管治療を終えたら、歯の股の部分で歯根を2分割し、ダメージを受けている歯の方を取り除きます。取り除いた方の歯根が歯肉に覆われるまで修復されたら、保管した歯根と隣り合う歯を利用し、ブリッジ治療(橋をかけるように補綴する治療)を行います。
トライセクションの処置の流れ
トライセクションを行う際も、ヘミセクションと同様に事前に神経を除去しなければなりません。神経を取ったあとの歯でも、上記と同様に細菌感染のおそれがある場合は、根管治療が必要です。
根管治療を終えたら、根の分岐する箇所を確認し、ダメージを受けている歯根を1本取り除き、歯根を2本残します。取り除いた歯根が歯肉に覆われるまで修復されたら、被せものをして終了です。
まとめ
ヘミセクションとは、複数の歯根(歯の根っこ)が存在する歯を、分割して残す治療法です。ヘミセクションは、根管治療・補綴・外科処置などが関連し、残った歯質が少なく、難しい処置と言われています。そのため、プラークコントロールが困難であり、処置後の歯の寿命は短いですが、歯を残すという意味ではメリットもあります。ヘミセクションを行うためには、以下の条件に合致している必要があります。主な条件は以下の通りです。
- 残った歯の歯根が骨でしっかり支えられている
- 歯根同士が離れている
- 歯根の股の部分が浅い位置にある
ヘミセクションの場合は、2本ある歯根のうち、半分を切除する方法を指します。
一方で、トライセクションは、3本ある歯根のうち、1/3を切除する方法です。
どちらの治療法を選ぶかは歯根の本数によって異なるため、歯医者に歯根の本数を確認してもらい、治療しましょう。