根管充填の術式にはどんなものがある？必要な手順を解説します
この記事の監修者
田中 宏幸/歯科医師
医療法人樹翔会 名古屋RD歯科クリニック院長。歯科医師歴20年以上。患者様一人一人に「最良のオーダーメイド治療」を提供すべく、様々なニーズや症例に合わせた自由診療システムを採用している。
- 所属学会
- 日本小児歯科学会、日本再生医療学会、日本インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、日本臨床歯科CAD/CAM学会など
- メディア情報
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・読売テレビ「かんさい情報ネットten.」
・歯科業界のコミュニケーションマガジン「Dentalism」
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「根管充填の術式ってどんなものがある？」
「どんな症例で使用するのかわからない」
「どんな手順で術式を行うか知らない」
このような疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
そこで今回は、根管充填の術式や具体的な手順について解説します。
また、根管充填の施術について理解を深めるために、必要な器具の名前・概要もリストにまとめました。
根管充填の詳しい術式や適用症例、具体的な手順を知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
根管充填とは？
根管充填とは、歯の根の中にガッタパーチャという根管内の空間を埋めるゴム状物質と薬剤を詰め込む治療法のことです。
歯髄（歯の内部にある神経や血管）を治療する根管治療のなかで重要な役割を持ち、きちんと処置できていないと細菌が感染します。
では、根管充填は、根管治療のなかでどのプロセスに該当するのでしょうか。
根管治療の手順は以下の通りです。
- レントゲンやCT、マイクロスコープなどを使用し、根管の状況を確認・診断する
- ラバーダム防湿（根管に細菌を侵入させない方法）をしながら、細菌をかき出す
- 薬剤で根管を洗浄・消毒する
- 根管に消毒薬を詰める
- 殺菌ができた状態で根管充填する
- 詰め物・被せものを装着する
上記の通り、根管充填は根管に消毒薬を詰めたあとの作業になります。
根管充填の術式
根管充填の術式には以下2つの方法があります。
- 側方加圧充填法
- 垂直加圧充填法
側方加圧充填法では、スプレッダーで側方から押して作った隙間に薬剤を入れます。
一方で垂直加圧充填法は、プラガーを垂直に押して薬剤を入れる方式です。
根管充填の術式①｜側方加圧充填法
側方加圧充填法とは、スプレッダーを側方から押して作った隙間にガッタパーチャと呼ばれる薬を入れていく術式のことです。
実は、日本の歯科ではほとんどがこの方法を採用していると言われています。
適用症例としては、歯根が長い症例で使用されます。
垂直加圧充填法の場合、歯根が長いと、プラガーが届かない可能性があります。
一方で側方加圧充填法であれば、側方から加圧するため、歯根が長くても問題ありません。
根管充填の術式②｜垂直加圧充填法
垂直加圧充填法は、プラガーを上から垂直に押し、ガッタパーチャと呼ばれる薬を上から下に押して詰める術式のことです。
日本の歯科では少数派であり、アメリカで主に採用されている術式と言われています。
適用症例としては、根管の下部の根尖部が繋がっているなどの複雑な状態の症例で使用されます。
根管充填の前に必要な準備
根管充填の前に準備すべき器具の名前・概要を解説します。
根管充填を行う際は、主に以下のものが必要となります。
| 準備すべき物品・器具 | 概要 |
|---|---|
| 超音波スケーラー | 歯の表面についた歯石や根管の汚れを、 超音波振動で洗浄・粉砕しながら取り除く器具 |
| 根管長測定用のメーター | 根管の長さを測定するためのメーター |
| ファイル | 歯根の先端まで穴を貫通させるための器具 |
| シーラー | ガッタパーチャと根管の密着性をサポートするためのもの |
| ラバーダムセット | 治療中に細菌や唾液などが入らないようにするためのシート |
| エンドゲージ | ガッタパーチャなどを固定して適当な長さにカットできる器材 |
| ペーパーポイント | 根管内の浸出液や、余分な薬液などを吸収し乾燥させるもの |
| マスターポイント | 主となるガッタパーチャのこと |
| アクセサリーポイント | 先端の尖ったガッタパーチャポイントのこと |
| ガッタパーチャ | マスターポイントとアクセサリーポイントの総称 |
| スプレッダー | 根管充填時に薬剤を加圧（側方加圧）して、 次に充填するための隙間を空けるための器具 |
| プラガー | 根管充填時に薬剤を加圧（垂直加圧）して、 歯の根っこ方向へ押し込むための器具 |
| ヒートカッター | 余分なガッタパーチャをカットするための器具 |
| 根充用ピンセット | ガッタパーチャを根管へ移動・充填するための器具 |
準備の流れとしてはまず、仮封剤を外します。
その後、根管の長さを根管長測定用のメーターを使って測定します。
次に、エンドゲージでマスターポイント40号を19mmにカットしたら、カットしたマスターポイントをアルコールガーゼに乗せて待機します。
その後、歯根にマスターポイントを入れたら、デンタル撮影して挿入状態を確認し、問題なければ、根管内を洗浄・乾燥。シーラーを強く練り込んだら、これで根幹充填の準備は完了です。
【根管充填の術式①】側方加圧充填法の手順
それでは次に、日本でおなじみの側方加圧充填法の手順について解説していきます。
シーラーの準備が問題なければ、マスターポイントにシーラーをつけ、根管に挿入します。
マスターポイントを挿入したら、その側方からスプレッダーで押して隙間を作りできたスペースにマスターポイントより細いアクセサリーポイントを入れていきます。
再びスプレッダーを使用してアクセサリーポイントを側方から押し、隙間が空いた箇所にアクセサリーポイントを入れるという作業を隙間がなくなるまで繰り返します。
根管内がガッタパーチャ（マスターポイントとアクセサリーポイントの総称）で埋まったら、ヒートカッターでガッタパーチャをカット。
その後、プラガーで隙間がないよう押し込み、仮封剤で蓋をして終了です。
【根管充填の術式②】垂直加圧充填法の手順
次に、アメリカで主に採用されている垂直加圧充填法の手順について解説していきます。
シーラーの準備が問題なければ、マスターポイントにシーラーをつけ、根管に挿入します。
マスターポイントを挿入したら、ヒートプラガーを使用してマスターポイントをカットし、その後プラガーを使用してアクセサリーポイントを垂直に押していきます。
次に、垂直加圧充填専用のニードルを根管内に挿入して、熱したアクセサリーポイントを入れます。
再び、プラガーを使用して垂直にアクセサリーポイントを押していき、根管内に適量が充填できたら終了です。
まとめ
今回は、根管治療の術式や具体的な手順について解説しました。
根管充填とは、根のなかに薬剤などを詰め込む治療法のことです。
根管充填の術式には以下2つの方法があります。
- 側方加圧充填法（日本の歯科で主に採用されている方式）
- 垂直加圧充填法（主にアメリカの歯科で採用されている方式）
側方加圧充填法は、スプレッダーで作った隙間にガッタパーチャと呼ばれる薬を入れていく方法のことで、主に歯根が長い症例で使用されます。
一方で垂直加圧充填法は、プラガーでガッタパーチャを上から下に押して詰める方法のことで、根管が枝分かれして、根の先に付近（根尖）でつながっているなどの複雑な状態の症例で使用されることが多くなっています。
