抜髄のあと痛いと感じるのはなぜ?原因や治療法を解説します
この記事の監修者
田中 宏幸/歯科医師
医療法人樹翔会 名古屋RD歯科クリニック院長。歯科医師歴20年以上。患者様一人一人に「最良のオーダーメイド治療」を提供すべく、様々なニーズや症例に合わせた自由診療システムを採用している。
- 所属学会
- 日本小児歯科学会、日本再生医療学会、日本インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、日本臨床歯科CAD/CAM学会など
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抜髄のあと痛いと感じるのはなぜ?原因や治療法を解説します
「抜髄すると、歯の中に神経がないから痛みを感じないはずなのに、痛いと感じるのはなぜ?」
このような疑問を持つ方がいらっしゃるかもしれません。抜髄のあとに痛いと感じる要因はさまざまです。
そこで今回は、抜髄のあと痛いと感じる原因や治療法について解説します。
今まさに痛さで困っている方や、これから抜髄を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
抜髄のあと痛いと感じる際の症状
抜髄のあと痛いと感じる場合、以下の症状が出ていませんか?
- 歯に違和感がある
- 食事の際に痛む
- 歯茎が腫れている
食事の際に噛むタイミングで痛みを感じたり、平常時に歯に違和感が出るおそれがあります。また肉眼でもわかるほど、歯茎が腫れる場合もあるでしょう。
抜髄のあと、これらの症状に当てはまる場合は、治療が必要となります。
抜髄のあと痛いと感じる場合の症状①|歯に違和感がある
歯や歯茎に違和感や不快感が出る場合があります。体調不良の際や睡眠不足の際にもこれらの症状が出るケースがあるでしょう。
抜髄のあと痛いと感じる場合の症状②|食事の際に痛む
食事の際、食べ物を噛んだ瞬間に、歯やその周囲で痛みを感じる場合があります。
虫歯の場合は、安静時にも痛みが生じます。一方で、抜髄のあと痛いと感じる場合は、食べ物を噛んだ際に痛みが生じるケースがあるでしょう。
抜髄のあと痛いと感じる場合の症状③|歯茎が腫れている
抜髄のあとに、歯茎が腫れて歯茎そのものに痛みを感じる場合があります。
放置すると、膿が出て痛みが強くなるおそれがあります。
抜髄のあと痛いと感じるのはなぜ?
抜髄のあと痛いと感じる方がいらっしゃるかもしれません。
痛いと感じる主な原因は以下の通りです。
- 歯周病が悪化している
- 歯が割れている
- 噛み合わせがずれている
- 歯根の中に膿が溜まっている
- 根管治療が適切になされていない
- 管内に薬剤を詰めたときに圧力がかかっている
このように、歯の神経がない状態であっても、さまざまな要因で痛みを感じる場合があります。また歯の神経は歯の中だけではなく、歯の周りの組織にも通っています。そのため、歯が割れることで生じる痛みや、歯茎に炎症が起きることで生じる痛みなどもあるのです。また、根本的に根管治療が適切になされていないことで痛みが生じる場合もあるでしょう。
それぞれの原因について、以下でさらに詳しく解説していきます。
抜髄のあと痛いと感じる原因①|歯周病が悪化している
歯周病が悪化している場合、抜髄のあとであっても痛みを感じる場合があります。
この場合、歯茎に炎症が起き、腫れや痛み、出血などの症状が起こるでしょう。
放置すると膿が溜まり、さらに腫れや痛みが酷くなるため、治療が必要です。
抜髄のあと痛いと感じる原因②|歯が割れている
噛む際に歯に違和感があったり、痛みがあったりする場合は、歯が割れているケースがあります。歯が割れる状態は、外傷などで歯に強い力が加わる場合や、抜髄のあとに歯根に強い負担がかかる場合に起こり得ます。
特に、歯が縦に割れた状態では、口内細菌が歯の根の中に入って痛みを伴うことがあります。放置すると炎症が悪化し、痛みが強くなるおそれがあるため、抜歯が必要になることもあります。
抜髄のあと痛いと感じる原因③|噛み合わせがずれている
噛み合わせがずれている場合、歯に強い負荷がかかり、歯根膜などの歯周組織に刺激が加わります。そのため、歯の根っこの先や歯周組織の部分で痛みを感じる場合があります。
抜髄のあと痛いと感じる原因④|歯根の中に膿が溜まっている
歯根の中に膿が溜まっている場合、歯根膜などの歯周組織に痛みが生じます。放置すると歯の根っこから細菌が繁殖し、歯周炎に発展するおそれがあるため、膿を除去する必要があるでしょう。
抜髄のあと痛いと感じる原因⑤|根管治療が適切になされていない
抜髄のあとは、根管治療を行い、歯の根っこの内部を清掃や消毒・殺菌をしなければなりません。しかしこれらの処置が適切になされていない場合、細菌が繁殖して炎症が生じ、痛みを伴う場合があるでしょう。
抜髄のあと痛いと感じる原因⑥|根管内に薬剤を詰めたときの圧力がかかっている
抜髄のあとは、根管治療を行い、根管充填(根管内に薬剤を詰める)をしなければなりません。根管充填は、根管治療後に再感染を防止するために必要な処置です。処置時には、痛みが生じる場合があります。なぜなら、薬剤を根管に詰める際に生じる圧力がかかるからです。治療後に痛みが生じることをあらかじめ把握しておきましょう。
抜髄のあと痛いと感じる場合の治療法
抜髄のあと痛いと感じる場合は、以下の治療法を行いましょう。
- 根管治療
- 歯髄再生治療
- 歯周病治療
- 抜歯
神経に関係する治療のほか、神経以外に関連する要因で痛みが生じている場合は、歯周病治療や抜歯などが効果的です。現在、抜髄のあとに痛みを感じている方は、歯医者と相談して適切な治療を選択してください。
抜髄のあと痛いと感じる場合の治療法①|根管治療
根管治療とは、歯の根管にある虫歯に感染した神経や細菌などを除去する治療方法のことです。治療手順としては以下の通りです。
- 根管の状況を見て、診断を行う
- ラバーダム防湿(根管に細菌を侵入させない方法)をしながら、歯を傷つけないように細菌を除去する
- 薬剤で根管を洗浄・消毒する
- 根管に消毒薬を詰め、細菌感染を防止する
- 殺菌ができた状態で詰め物・被せものを装着する
根管治療が適切になされていない場合、細菌が繁殖して炎症反応が起き、痛みを感じる場合があります。この場合は、マイクロスコープを用いて、より精密な根管治療が必要です。マイクロスコープを用いることで、肉眼では確認しづらい箇所が確認しやすくなり、歯髄(歯の神経)の取り残しが少なくできるでしょう。根管治療が適切にできれば、歯周組織が改善され、痛みの改善が期待できます。
抜髄のあと痛いと感じる場合の治療法②|歯髄再生治療
歯髄再生治療とは、乳歯や親知らずなどから採取した歯髄幹細胞を神経のない歯に移植し、歯髄(歯の神経)を再生させる治療方法のことです。治療手順としては以下の通りです。
- 根管や歯質の状態確認や尿検査、採血などを通して、歯髄再生医療が受けられる状態かを確認する
- 乳歯や親知らずを抜歯し、抜歯した歯から歯髄幹細胞を採取。その後、細胞を培養する
- 治療対象の歯の神経を抜いたあと、培養済みの歯髄幹細胞を移植する
- 再生・修復の状況を確認しながら約6ヶ月〜12ヶ月の間、経過観察を行う
- 経過状況に問題がない場合、詰め物や被せ物を取り付け、治療完了
根管治療後の詰物を歯髄幹細胞にして、歯髄を再生させることで、歯の機能を修復することが期待できます。
抜髄のあと痛いと感じる場合の治療法③|歯周病治療
抜髄のあと痛いと感じる原因が歯周病にある場合は、歯周病治療が必要です。
歯周組織に腫れや痛み、膿が生じている場合は、歯茎を切開して歯根面の歯石を除去するなどの歯周外科治療が必要な場合もあります。
抜髄のあと痛いと感じる場合の治療法④|抜歯
歯根が割れていている場合(特に歯根が垂直に割れている)、抜歯が必要になるケースが多いです。歯が割れている状態を放置すると、歯茎や歯槽骨(歯の根を支える骨)が炎症を起こし、痛みが強くなるおそれがあるからです。この場合は、抜歯となる可能性があります。
まとめ
今回は、抜髄のあと痛いと感じる原因や治療法について解説しました。
抜髄のあとであっても、歯に違和感があったり、食事の際に痛みを感じる場合があります。
また歯茎が炎症を起こし、腫れが生じる場合もあるでしょう。
抜髄のあと痛いと感じる主な原因は以下の通りです。
- 歯周病が悪化している
- 歯が割れている
- 噛み合わせがずれている
- 歯根の中に膿が溜まっている
- 根管治療が適切になされていない
- 根管内に薬剤を詰めたときに圧力がかかっている
また、抜髄のあと痛いと感じる方は以下の治療法を検討してみてください。
- 根管治療
- 歯髄再生治療
- 歯周病治療
- 抜歯
抜髄のあとの歯の中に神経がない状態であっても、歯周病が悪化したり、歯が割れたりすると痛いと感じる場合があります。また、噛み合わせがずれたり、歯根の中に膿が溜まったりすることで痛いと感じる場合もあるでしょう。該当する方は、歯医者に相談のうえ、適切な治療法を選択してください。