歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない?膿がたまる原因や治療法を解説します
この記事の監修者
田中 宏幸/歯科医師
医療法人樹翔会 名古屋RD歯科クリニック院長。歯科医師歴20年以上。患者様一人一人に「最良のオーダーメイド治療」を提供すべく、様々なニーズや症例に合わせた自由診療システムを採用している。
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- 日本小児歯科学会、日本再生医療学会、日本インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、日本臨床歯科CAD/CAM学会など
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歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない?膿がたまる原因や治療法を解説します
「歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない?」
このような疑問を持つ方がいるかもしれません。
結論からいうと、歯茎に膿がたまった場合、切開して縫わないといけないケースがあります。しかし、それは疾患や歯の状態によって異なります。
そこで今回は、歯茎に膿がたまった場合の原因と対処法について、事例を挙げながら解説します。歯茎にたまった膿を治療したい方や、治療法について詳しく知りたい方は参考にしてみてください。
歯茎に膿がたまっても切開して縫わないで済む場合は?
歯茎に膿がたまってしまった場合、切開・縫合の必要性は原因ごとに異なります。
歯茎に膿がたまっても切開して縫わないで済む場合は以下の通りです。
- 初期の歯周病
- 根尖性歯周炎
- 歯根嚢胞(嚢胞が小さい場合)
歯茎に膿がたまっても切開して縫わないで済む場合①|初期の歯周病
歯周病とは、歯根膜(しこんまく)や歯肉、歯の根っこを支える歯槽骨(しそうこつ)などの歯周組織に細菌が侵入し、炎症を起こす病気のことです。歯周病の症状としては、以下が挙げられます。
- 歯茎が痛む
- 歯がぐらつく
- 歯茎が腫れる
- 歯茎が出血する
- 膿が発生する
初期の歯周病の場合は、歯周病菌の原因となる歯垢や歯石を除去することで治療が可能です。これらを除去することで、歯周病の症状が少しずつ改善されるでしょう。
歯茎に膿がたまっても切開して縫わないで済む場合②|根尖性歯周炎
根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)とは、歯根の先端に炎症が起き、膿がたまる病気のことです。根尖性歯周炎は、感染源となる根管の中をを洗浄・消毒・殺菌する根管治療で改善できます。その際、歯根の先端にある膿の除去も可能な範囲で試みます。
歯茎に膿がたまっても切開して縫わないで済む場合③|歯根嚢胞(嚢胞が小さい場合)がある
歯根嚢胞(しこんのうほう)とは、歯の根っこの先端にできる袋状の膿のことです。嚢胞が小さい場合は、根管を洗浄・消毒・滅菌する根管治療で改善が見込めます。
歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない場合は?
歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない場合は以下の通りです。
- 重度の歯周病
- 重度の根尖性歯周炎
上記の場合は、切開・縫合が必要になるおそれがあります。
歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない場合①|重度の歯周病
重度の歯周病の場合、歯垢や歯石だけの除去では済まない場合があり、多くの膿が歯茎に蓄積されるおそれがあります。そのため、歯茎を切開して膿を除去したり、歯を支える歯槽骨を修復したりする外科治療が必要なケースがあるでしょう。
歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない場合②|重度の根尖性歯周炎
歯根の先端に炎症が起き、膿がたまる根尖性歯周炎が重症化すると、根管治療であっても改善できない場合があります。この場合は、多くの膿が蓄積されている状態であり、歯根端切除術を用いて歯茎を切開し、歯根嚢胞(膿の袋)を除去しなければなりません。切開して治療後は、縫合しなければならないため、負担がかかるおそれがあります。
歯茎に膿が出たときの応急処置
歯茎に膿が出ると、痛みや腫れといったつらい症状が現れることもあります。すぐに病院に行けないときは、応急処置として以下の対処法を実践してみてください。
- うがい薬で清潔にする
- 患部を冷やす
両方を実践すると、痛みや腫れが治まりやすくなるため、おすすめです。
うがい薬で清潔にする
歯茎から膿が出ている場合、細菌が活性化し、不衛生な状態になっています。そのため、口腔内を清潔に保つ意味で、イソジン®やコンクールなどのうがい薬でうがいをしてください。これらを使用することで、殺菌・消毒作用が期待でき、口腔内が清潔に維持できます。
患部を冷やす
歯茎の膿が出ている箇所が温まると、血行が良くなることで痛みや腫れが強くなるおそれがあります。そのため、歯茎に膿が出ている場合は、患部を冷やすことが大切です。頬の上から冷たいタオルなどを当て、少しずつ冷やしてください。冷やし過ぎると、血行不良が起こってしまうこともあるため、注意が必要です。
歯茎に膿が出たときの注意事項
歯茎に膿が出たときにやってはならない注意事項があります。
もし歯茎に膿が出た場合は、以下の注意事項を守ってください。
- 自分で膿を出してはいけない
- 長時間の入浴や激しい運動を控える
歯茎に膿が出た場合は、安静にして直ちに歯医者に行くことをおすすめします。
自分で膿を出してはいけない
膿が出ている状態で針を刺して膿を出したり、圧迫して潰したりすると、歯肉が傷ついて炎症が悪化する場合があります。そのため、歯茎に膿が出た場合は、絶対に刺激しないようにしてください。手で触るだけでも、細菌が繁殖する原因になるため、触れないようにしましょう。
長時間の入浴や激しい運動を控える
歯茎が化膿している状態で長時間入浴したり、激しい運動を行ったりすると、血行が良くなって歯茎の腫れや痛みが強まるおそれがあります。歯茎が化膿している場合は、長時間の入浴や運動を控え、安静に過ごしてください。
歯茎に膿が出て抜歯しなければならない場合とは?
歯茎に膿が出て抜歯しなければならないケースとしては、歯根破折(しこんはせつ)が挙げられます。
歯根破折とは、歯の根っこが割れたり折れたりする状態を指します。歯根破折は、噛み合わせが悪かったり過度な力が加わったりすることで起こります。
放置すると、歯が欠けた部分から細菌が入り込み、歯根や歯茎に炎症が起こる場合があるでしょう。治療する際は、できる限り元の状態に戻すための修復処置が取られます。しかし、処置が難しい場合は、抜歯をしなければなりません。
歯茎に膿が出たときは根管治療がおすすめ
根尖性歯周炎や歯根嚢胞といった膿が出る病気の場合は根管治療がおすすめです。根管治療を行うことで、細菌に感染した膿を除去し、殺菌して清潔な状態にできます。
歯根嚢胞の場合は、CTレントゲンで根の状態を把握し、マイクロスコープで拡大しながら根管治療を行います。
根管治療のメリットは、抜歯をせずに済む点です。大事な歯を残しつつ、機能性や審美性の維持が期待できます。また根管治療を行うことで、激しい痛みを無くすこともできます。
歯茎に膿が出て痛みを抱える方や、治療法に悩む方は、歯医者に相談して根管治療を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
今回は、歯茎に膿がたまった場合、切開・縫合が必要なケースとそうでないケースを解説しました。歯茎に膿がたまっても切開して縫わないで済む場合は、以下のケースです。
- 初期の歯周病
- 根尖性歯周炎
- 歯根嚢胞(嚢胞が小さい場合)がある
炎症が軽微の場合は、歯茎に膿がたまっている状態でも、切開・縫合が不要な場合が多いです。一方で、歯茎に膿がたまったら切開して縫わないといけない場合は以下が挙げられます。
- 重度の歯周病
- 重度の根尖性歯周炎
炎症が重度になっている場合、膿を根本的に治療しなければなりません。
そのため、切開・縫合が必要な場合が多くなるでしょう。
歯茎に膿が出たときの対処法としては、患部を冷やし、うがい薬を飲むことが大切です。
これらを実践することで、痛みや腫れが治まりやすくなるため、実践してみることをおすすめします。
また注意事項としては、自分で膿を出さないことと、激しい運動を控えることが重要です。
膿を出すと、歯肉が傷ついて炎症が悪化する場合があります。また激しい運動は血行を良くし、歯茎の腫れや痛みを強めるかもしれません。歯茎に膿が出た場合は、膿を刺激せず、安静に過ごしましょう。
歯根破折などで歯茎に膿が出た場合は、最悪の場合、抜歯をしなければならないケースもあります。一方で、根尖性歯周炎や歯根嚢胞などの場合は、根管治療で治療できる場合もあります。
根管治療のメリットは、大事な歯を残しつつ、機能性や審美性の回復が期待できる点です。また根管治療を行うことで、激しい痛みを無くすこともできます。歯茎に膿がたまって不安な方は、歯医者に相談し、根管治療を検討してみてはいかがでしょうか。