歯根嚢胞とは?原因や治療法を解説します

この記事の監修者

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田中 宏幸/歯科医師

医療法人樹翔会 名古屋RD歯科クリニック院長。歯科医師歴20年以上。
患者様一人一人に「最良のオーダーメイド治療」を提供すべく、様々なニーズや症例に合わせた自由診療システムを採用している。
所属学会
日本小児歯科学会、日本再生医療学会、日本インプラント学会、日本顕微鏡歯科学会、日本臨床歯科CAD/CAM学会など
メディア情報

・読売テレビ「かんさい情報ネットten.」

https://youtu.be/FYxGh2_lbls

・歯科業界のコミュニケーションマガジン「Dentalism」

https://www.satsuki-dc.com/wp-content/uploads/2021/09/45b56eaa7eb00975f093afa75bda7c3a.pdf

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歯根嚢胞(しこんのうほう)とは?原因や治療法を解説します

放置すると歯根に膿が蓄積され、痛みや腫れが増す病気。それが歯根嚢胞(しこんのうほう)です。
歯根嚢胞は、嚢胞が小さい段階の場合、症状が出にくく発見が遅れることもあります。
本記事では歯根嚢胞の原因や治療法を解説します。歯根嚢胞について知識を深めたい方や治療法が知りたい方は、ぜひ参考にしてみてください。

歯根嚢胞とは?

嚢胞とは、袋状のできもののことを指し、袋の内部は液体で満たされています。嚢胞は歯茎や舌、唇や骨などに発生します。歯根嚢胞とは、歯根の先に生じる嚢胞のことです。顎の骨の中に生じる嚢胞の多くは歯根嚢胞であるとされています。

 

歯根嚢胞を放置すると、膿が蓄積され、痛みや腫れが増します。また、、場合によっては細菌が副鼻腔に入り、上顎洞炎等が生じるおそれもあるでしょう。

 

歯根嚢胞の主な症状とは?

歯根嚢胞は時間の経過とともに少しずつ大きくなり、初期段階では症状がないこともあるため、気づきにくいです。膿が蓄積されて症状が出始めたり、レントゲン撮影をしたりしたときに発覚することもあります。歯根嚢胞の主な症状は以下の通りです。

  • 歯茎から膿が生じる
  • 噛んだ時に痛みが生じる

上記の症状、違和感などが発生した場合は速やかに歯医者を受診してください。
また定期的に歯医者に通い、口内環境をみてもらうといいでしょう。

 

歯根嚢胞の症状①|歯茎から膿が生じる

膿とは、細菌と戦ったあとに生じる白血球の死骸です。細菌が奥深くへ侵入すると、身体の防衛反応により、これ以上細菌が広がらないように、膿の袋ができてしまいます。
放置すると、骨や歯茎を突き破って膿が出てくることもあるでしょう。場合によっては、歯茎に激しい痛みや腫れが生じるおそれがあります。

 

歯根嚢胞の症状②|噛んだときに痛みが生じる

歯根嚢胞ができると、噛んだときに痛みが生じる場合があります。この原因は、歯根膜が細菌に感染していることが関係しています。感染部分に触れると痛みが生じたり、歯が浮くような違和感があったりします。この違和感は、嚢胞を体外に排出しようとする作用がはたらき、歯ごと外に押し出そうとするために起こります。

 

歯根嚢胞の原因とは?

歯根嚢胞の発生要因としては、根尖性歯周炎が関係しています。
歯髄炎(歯の神経が細菌に感染して炎症を起こす)が進行し、歯の根の先(根尖)まで達した場合、根尖性歯周炎が生じます。歯根嚢胞の原因は、この根尖性歯周炎が慢性化することです。

 

歯根嚢胞は、歯の神経を取った状態でも生じるおそれがあります。
歯の神経を取ると、歯の内部に空洞が生じるため、細菌の侵入を防ぐために空洞を埋めるための根管充填材(薬剤)が必要です。しかし、根管形状や治療手技によっては隙間が生じてしまい、隙間から細菌が感染して根尖性歯周炎を引き起こすおそれがあります。

 

人間の身体には、免疫力が備わっているため、細菌が侵入しても対処しようとします。
しかし体調不良や風邪、薬の副作用などで免疫力が低下すると、細菌に抵抗できずに細菌が活性化するおそれがあるのです。細菌が活性化する状態を放置すると膿が蓄積され、歯根嚢胞につながるため、早期発見・早期治療が大切です。

 

歯根嚢胞の治療法とは?

歯根嚢胞の治療法は主に以下3つです。

  • 根管治療
  • 嚢胞摘出術
  • 抜歯

治療法は、嚢胞の大きさや炎症の度合いによって異なります。歯科医師に状態を診ていただき、最適な治療法を選択してください。

 

歯根嚢胞の治療法①|根管治療

根管治療とは、歯の神経を除去し、根管内を清掃・洗浄する治療法のことです。患部の痛みや腫れが治まったら、再感染を防止するために根管に薬剤を詰めて、詰めもの・被せものをして密閉します。嚢胞が小さい場合に実施可能な治療法です。

 

歯根嚢胞の治療法②|嚢胞摘出術

嚢胞摘出術では、麻酔をしたあと、嚢胞付近の歯茎を切開して歯根嚢胞を摘出します。
その後、洗浄して切開した歯肉を糸で縫います。(このタイミングで、感染源である歯根の端を切除するのが歯根端切除術です)

 

歯根嚢胞の治療法③|抜歯

炎症の度合いがひどく、根管治療や嚢胞摘出術を用いても対処できない場合は、抜歯をします。

 

歯根以外の嚢胞の治療法とは?

嚢胞は、歯根以外にも存在します。
歯根嚢胞以外の種類としては以下が挙げられます。

  • 類皮嚢胞・類表皮嚢胞
  • 粘液嚢胞
  • 術後性上顎嚢胞
  • 歯原性角化嚢胞
  • 含歯性嚢胞

上記は、それぞれで嚢胞の発生箇所が異なります。また、治療法もさまざまです。
それぞれ詳しく解説しますので、知識として把握しておきましょう。

 

歯根以外の嚢胞の治療法①|類皮嚢胞・類表皮嚢胞

類皮嚢胞は、嚢胞壁に汗腺や皮脂腺などを含むものを指します。一方で、表皮のみからなるものが類表皮嚢胞です。類皮嚢胞・類表皮嚢胞は、口底の真ん中辺りに発生します。嚢胞が大きくなると顎の下が腫れたり、舌が後方に押されたりして、嚥下や発音障害が発生する場合があります。治療法としては、口底部もしくは、下顎の下側を切開して嚢胞を摘出する方法が取られます。

 

歯根以外の嚢胞の治療法②|粘液嚢胞

粘液嚢胞は、下唇や舌下面にみられる嚢胞です。口の粘膜を噛んだり、異物が刺さったりして、唾液が漏れ出すことで形成されます。治療法としては、原因となる唾液腺と嚢胞を摘出する方法が取られます。

 

歯根以外の嚢胞の治療法③|術後性上顎嚢胞

術後性上顎嚢胞は、蓄膿症の手術後、数年〜数十年経過し、頬部や上顎に生じる嚢胞のことです。顔が腫れ、鼻詰まりや鼻水などが生じるおそれがあります。治療法としては、鼻腔を開窓(歯茎を切開して歯の表面を出す)し、嚢胞を摘出する方法が取られます。

 

歯根以外の嚢胞の治療法④|歯原性角化嚢胞

歯原性角化嚢胞は、下顎角部から下顎枝部に発生する嚢胞のことです。主に歯胚(歯の芽)が嚢胞化することで生じます。治療法としては、嚢胞を骨面ごと削り取ることが推奨されています。嚢胞が大きい場合は、開窓(歯茎を切開して歯の表面を出す)して摘出することもあるでしょう。

 

歯根以外の嚢胞の治療法⑤|含歯性嚢胞

含歯性嚢胞は、歯の原基(歯が発生する組織)の上皮から発生する嚢胞のことです。症状が出ないことがあり、エックス線撮影時に発見される場合があります。治療法としては、原因となる歯の抜歯と嚢胞を摘出する方法が取られます。

 

まとめ

今回は、歯根嚢胞について解説しました。
歯根嚢胞とは、歯根の先に生じる嚢胞のことです。発症すると、主に以下の症状が起こります。

 

  • 歯茎から膿が生じる
  • 噛んだときに痛みが生じる

歯根嚢胞は時間の経過とともに少しずつ大きくなり、初期段階では症状がないこともあるため、気づきにくいです。膿が蓄積されて症状が出始めたり、レントゲン撮影をしたりした際にしか確認できないことがあります。そのため、定期的に歯医者に通い、口内環境をみてもらうといいでしょう。

 

歯根嚢胞を放置すると、歯根に膿が蓄積され、痛みや腫れが増します。また、上顎の奥歯に歯根嚢胞ができると細菌が副鼻腔に入り、上顎洞炎が生じるおそれもあるでしょう。歯根嚢胞の発生要因としては、根尖性歯周炎が慢性化や免疫力の低下などが挙げられます。

 

歯根嚢胞の主な治療法は以下3点です。

 

  • 根管治療
  • 嚢胞摘出術
  • 抜歯

嚢胞には、歯根嚢胞以外にも以下の種類の嚢胞が存在します。

 

  • 類皮嚢胞・類表皮嚢胞
  • 粘液嚢胞
  • 術後性上顎嚢胞
  • 歯原性角化嚢胞
  • 含歯性嚢胞

嚢胞が発生した場合は、速やかに歯医者に相談し、適切な治療法を選択してください。
また普段から、定期的に歯医者に通い、口内環境をみてもらう習慣をつけるといいでしょう。

 

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